禁断の説得術 応酬話法 「ノー」と言わせないテクニック 村西とおる

前科7犯、借金50億、AVの帝王が語る「応酬話法」

山あり谷あり、高低差が尋常でない村西とおる氏の半生

半生伝「全裸監督」に詳しいですが、ざっと挙げただけでこの起伏。

  • バー「どん底」のセックスコンテストで1週間に12人を抱きトップ
  • 英語百科事典エンサイクロペディアのトップセールスマン
  • インベーダーゲームの販売で得た利益で「ビニ本・裏本の帝王」になるも逮捕
  • クリスタル映像・ダイヤモンド映像設立で「AVの帝王」になるも逮捕
  • ハワイロケでFBIに逮捕、懲役370年を求刑、弁護士費用と滞在費用で1億円かけて帰国
  • 衛星放送のアダルトチャンネル事業に失敗し50億の負債を抱える
  • 債権者にダムに連れて行かれ、ここから飛び込めと言われる
  • 病気で1週間以内に100%死ぬと宣告されるが、復活する

これらの状況を「応酬話法」で乗り切った、そのノウハウが一挙公開されている本、という触れ込みです。

「応酬話法」とは

営業においては断られたところがスタート、相手に認められ、好かれるには、相手を認め、満足させること。
相手の反応にどう「応酬」するかというセールストーク。
セールスマンは「モノを売るのではなく、需要を創造する仕事」だと語る村西監督。
このテクニックを5つの観点で解説しています。

質問話法

  • 質問をし、反対することなく望む「結論」に導いてゆく
  • 意見の一致している問題から始め、絶えず一致していることを強調して話を進める
  • 人間としてのお客さまに興味を持つ、純粋な好奇心が相手に伝わり、お客様の心を開かせる
  • その商品がお客さまにとっての必要性を満たしているがゆえに存在していることをお客さまに理解してもらうためのステップ

例:
「これからの国際化社会、英語で啖呵を切れるようになったらいいと思いませんか?」と「はい」としか答えられないようなイエスセットで心を開き、「高い」と言われたら「高いですよね」と、価値観が同じであることを認識させる。
AV出演を悩む女性に「髪にウィッグをつけて出演する方法、ホクロをつける方法、どちらにしますか」と2者択一のダブルバインドを仕掛けると同時に、女性が悩んでいることへの理解を示し、信頼を得る。

関節否定話法

  • 社会生活の営みの中で認めて欲しい、認められたい、自己承認欲求
  • Noにどう対応するか
  • まず受け入れるところから始める

所謂Yes, but…法。
AV出演を悩む女性に「有名タレントも同じことを言っていた」と虚栄心を満たしてあげる、出演を拒む女性に「そうだよね、君みたいな素敵な女性が簡単にAVに出演するわけないよね。」とまず認めつつ、

「簡単に『出演します』という娘は、制作側からは魅力的に見えないですね。君みたいに消極的で最初は迷うくらいの娘じゃないと、こちらが燃えないから、いい作品が撮れないんですよ。正直に言うと、君が『やっぱりやめようかな』と言った時、私は心のなかで『やった!』と叫んでいたんですよ」

と伝え、出来心を生ませる。

繰り返し話法

  • 否定の言葉をそのまま繰り返すことで緩和される
  • 受け入れられた、同じ価値観を持っていると思ってもらえる
  • お客さまは商品が欲しい迷いを断り文句で表現、できることなら欲しい、の裏返し

基本は所謂「ミラーリング」ですが、村西流応酬話法にかかるとこういうことが起こります。

  • オリンピックの代表選手の自衛艦に英会話教材を売る
  • 吹雪で転がり込んだ食堂のお婆さんに英会話教材を売る
  • 有名人をAVに出演させる
  • ビニ本を横流しした印刷業者に横流しをやめさせる

実例話法

近しい具体的な例を出して説得力・親近感・安心感を持ってもらう

例:
顔バレを心配する女性に、有名AV女優のメイク前、メイク後の写真を見せて心配を払拭
面接で専属女優に会わせて素人さんだからこその悩みや不安を実例話法で氷解させる

聞き流し話法

  • 論争を避け自分のペースに持ち込む
  • 理詰めの相手には理屈で返さない
  • 自問自答の時間を与える

例:
銀行の返済の強要に反論せずに3時間ただ怒鳴られて、相手の顔を立てる

不屈の人

いずれも心理学的なテクニックとしては普遍的なものでありますが、ただのノウハウ本ではなく、村西監督の手(口)にかかると、そこには「現実歪曲空間」が生まれ、思わずそうなのかな、と思ってしまう空気が流れます。
抱腹絶倒というか滅茶苦茶なエピソードだらけですが、他にもこんなエピソードも。

  • ビニ本店に納品の時に会ったヤクザに「儲かりすぎて頭がおかしくなりそう」と言ったら、リボルバー式拳銃を押し付けられる
  • FBIの家宅捜査で「フリーズ」と「プリーズ」を聞き間違え笑ってしまい、銃の安全装置を外される
  • 恋仲になった人妻に心中を迫られる
  • 晴海ふ頭公園でホームレスに間違われBVDの下着と菓子パンとジュースの缶をもらう

最後の章で村西監督は、相手を動かす原動力は「情熱」だと語ります。

  • 情熱は打算を打ち砕く力を持っている
  • 情熱さえあれば手に入れたいものはこの世の中にあるものならなんでも手に入れられる
  • 自分が何者であるかは自分が決めることではない

情熱を持って、相手のことを思って、素晴らしいものをお届けする
このマインドセットの(類い稀ない)強さこそ、この村西流「応酬話法」の肝ではないかと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA